──全社員が、自社の経営戦略や方針を理解すべきである。
上記のような問いかけをされたら、あなたはどう考えますか?
経営者の立場からすれば「社員は自分と直接関係のあることだけわかっていればいい」と考える方もいるでしょうし、社員の立場からすれば「経営の話をされてもよくわからない」という人も多そうです。
しかし、社員一人ひとりが会社の戦略や方向性を理解することで、企業経営にさまざまな“良いこと”が見込めます。 この記事では、社員が自社の経営戦略や方針について理解するメリットと、経営者から社員にメッセージを発信するときのコツをご紹介します。

社員の約半数が自社のビジョンを知らない

そもそも実態として、会社の戦略や方向性は、社員にどれだけ理解されているのでしょう。 2020年6月に株式会社JTBコミュニケーションが実施した調査によると、100名以上規模の企業における部長以下クラスの社員のなかで、自社のビジョンを「知っている」と答えた割合は51.1%に留まりました。



引用元:会社員600人の意識調査から見えた、会社のビジョン浸透のリアル

「知っている」と回答した人の割合が半数に及んでいるため、そこまで状況は悪くないように見えます。しかし、一方でネガティブな回答をした人(「知らない」「ビジョンがあるかどうかしらない」「わからない・答えたくない」と回答した人)も48.9%と、決して少なくはありません。 また、回答の内訳については 一般社員よりもミドルマネジメントが「知っている」と回答する率が高かったと報告されています。このことから、経営とは距離がある社員の間で、組織のビジョンが認識されていないことが推測されます。

社員がビジョンを理解していないと生じる不都合

ビジョンや経営戦略といった会社の方向性が社員に理解されていないと、どういった不都合が生じるのでしょう。
たとえ自社の方針が社員に理解されていなくても、社員一人ひとりが経営目標につながる成果を創出できていれば、問題はありません。 しかし、経営方針と社員の認識にギャップがある場合、中長期的に以下のようなリスクが生じる場合があります。

  • ・社員の仕事が会社の方針と逸れる
  • ・社員の生産性が下がる
上記の項目について、詳しく見ていきましょう。

社員の仕事が会社の方針と逸れる

社員が経営戦略を理解していなければ、その仕事と会社の目指す目的・目標に、ズレが生じる恐れがあります。 そもそも「戦略」という言葉は軍事用語を語源としており、競争を生き抜くための作戦を意味しています。軍を率いて敵に勝つためには、正しい戦略を立てたうえで、それを組織の構成員が着実に実行することが求められていました。

想像してみてください。大将が「山から攻め入るべきだ」と考えているのに、部下の一部が川から攻め始めたら、戦局はどうなるでしょう。戦略の成功率はおろか、組織の生存率も危うくなります。

企業経営でも、同じことが言えます。限られた時間と資源を有効に使って顧客に価値を届けるためには、あるいは市場のなかで競合他社に淘汰されずシェアを拡げていくためには、やみくもに行動を起こさず、きちんと作戦を立てて実行していくことが重要です。

もし、経営層が考えた戦略と社員の方向性にズレが生じていたら、社員一人ひとりの時間と労力が無駄になってしまうリスクがあります。組織全体のリソースを最大限に活かすためにも、社員が自社の方向性を理解し、目指すべきところに向かって動くよう働きかける必要があるのです。

社員の生産性が下がる

では、社員の仕事と会社の戦略が一致している場合はどうでしょう。社員個人が会社の方針を理解・納得していなくても、結果的にその仕事が会社の目指す方向と一致していれば、問題はないように見えます。
しかし、会社の “考え” と社員の “行動” が一致している場合にも、リスクは潜んでいます。

その詳細を説明する前に、前提となる用語「 エンゲージメント 」についてふれていきます。

近ごろ「エンゲージメント」という言葉を耳にするようになりました。
「エンゲージメント」は「結婚」「約束」「興味関心」などの意味を示す英単語です。 会社に対する社員の愛着や信頼を「エンゲージメント」と表現し、その向上を重視する経営手法が注目されつつあります。
従業員の会社に対するエンゲージメントが高まると、企業経営にとってどんな “良いこと” があるのでしょう。
そもそも、会社組織は人で成り立っています。人はロボットと違い、心と感情を持っています。ロボットは指示や命令を淡々とこなしますが、人間の場合そうはいきません。与えられた指示や仕事に納得がいかなければ、モチベーションが下がり、良い成果を発揮できないこともあるでしょう。
実際、 株式会社リンクアンドモチベーション が2018年におこなった調査では、従業員エンゲージメントの向上が会社組織の営業利益率・労働生産性にポジティブな影響をもたらすという報告もされています。

さて、話を戻しましょう。会社の方向性と社員の働きが一致している一方で、その方向性を社員がよく理解できていない、あるいは納得いっていない場合、どのようなリスクが見込まれるでしょうか。
自社の戦略を理解・納得できていない状態は、会社に対するエンゲージメントが低い状態とも言えます。自分の組織に対する愛着が持てていなければ、仕事に対する当事者意識が持てず、高い生産性を見込めません。最悪の場合、組織全体の離職率が増加する恐れもあります。

たとえ社員の「行動」と組織の「戦略」が一致していても、その行動に戦略への理解や納得感が伴っていなければ、中長期的に不都合が生じる恐れがあるのです。

会社の方針を社員に理解してもらうには

ここまで、社員に経営戦略や企業方針を理解してもらうことの重要性について説明してきました。
では、社員に戦略や方針を理解してもらうには、どのようなアクションを取ればよいのでしょう。事例を元にご紹介します。

会社の活動や社長の考えを社内外に発信

対従業員コミュニケーションの手段として代表的なのが、全社ミーティングや社内報です。
たとえば、NTTコミュニケーションズでは、 「 KURUMAZA.exe 」 というイベントを不定期で開催し、幹部層と社員が直接対話できる場を設けることで、企業理念や経営方針の浸透をおこなっています。また、トヨタでは 「 トヨタイムズ 」 というオウンドメディアを活用して、会社の活動や社長の考えを社内外に発信しています。 このように、直接社員同士が集う場や、間接的に社員が触れる媒体を通じて発信するやり方が、従業員に対する情報発信のオーソドックスな方法としてあるでしょう。

「伝わる」方法を考え抜くのはもちろん、上記のような施策であれば、既に実践している企業も多いでしょう。ここで重要なのは、“発信すること” で満足するのではなく、“どうすれば伝わるのか” を考えることです。 たとえ経営層の側から情報発信をしていても、従業員にそれが伝わっていない、という状況は往々にしてあります。毎週社内SNSでトップメッセージを配信していても、ほとんどの従業員はそれを開封すらしていないかもしれません。

情報は発信することがゴールではありません。発信した後に、その内容を受け取ってもらわなければいけませんし、受信した側が内容を正確に理解・判断できるようにしなければいけません。そして究極的には、発信した内容をもって、受信者に何らかの行動変容を促す必要があります。 先に紹介した「トヨタイムズ」では、社長のメッセージが インタビューなどのコンテンツ で読みやすく展開されています。

また他社の事例でいうと、ZOZOでは毎週水曜日に 社長がパーソナリティを務めるラジオ を配信しているそうです。こうした形式の発信はおもしろみがあり、長文のテキストメッセージが淡々と送られてくるよりも、多くの社員が目や耳を傾けたくなるでしょう。 ただ情報を発信するだけでは、受け取り手に理解され、その心を動かすことはできません。経営戦略や方針を社員に理解してもらい、組織の生産性を高めていくには、「どうすれば伝わるのか」を意識して、媒体や内容をしっかり設計していく必要があるのです。

「伝わる」情報発信を実現するために

繰り返しになりますが、全社の意識を統一するためには、単に情報を発信するのではなく、「どうすれば伝わるのか」を意識して発信する方法や内容を検討することが重要です。
ドリーム・アーツは過去20年に渡り、自社製品を用いた大企業のコミュニケーション改革に尽力してきました。 そんな弊社が提供する「InsuiteX」を使えば、全社的な意識共有のためのポータルサイトを構築し、現場に伝わりづらかった経営方針や指標を社内に浸透さることができます。
【参考記事】InsuiteXで実現した「全社意識共有」ポータルはこちら

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ロジスティード様、三菱UFJモルガンスタンレー証券様、アシックス様など多くの企業様が、弊社と一緒に社内ポータルサイトを活用して社内コミュニケーション改善に成功されています。
各社の事例はこちらよりご覧ください。

大企業の社内ポータル成功事例8選

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「あるべき情報共有のあり方」や「グローバルなコラボレーション・プラットフォーム」、「業務見える化」を実現された皆さまの、「導入前の課題」と「導入後の効果」についてご紹介しています。

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執筆者
鈴木(すずき)
株式会社ドリーム・アーツ 協創パートナー推進本部 EL2グループ

ドリーム・アーツ入社後、SmartDBのカスタマーサクセスを担当。プロジェクト型のサービス導入支援に従事し、大企業の業務DXに伴走。2021年より、InsuiteXの販売・導入支援も担当。